こんにちは、Rayです。
今回は、学振DCの人が払うことになる税金や保険料等を計算したので、その結果を共有します。
学振DC採用者は、月20万円をいただけます。
しかし同時に、税金や健康保険など支払わなければならないものも増えてしまいます。
では、自由に使えるお金が手元に実質いくら残るのでしょうか?
今回の記事では、私が具体的に計算した結果を紹介します。
誰もが気になる点だと思いますので、参考になれば幸いです。
似た記事は他のサイトにもいくつかありますが、ここ数年で税率や控除額の変更などがあったため、わずかに値がずれている記事もあります。
本記事には、2022年度(令和4年度)5月現在の最新情報をもとに計算した結果を示します。
結果だけ知りたい場合は、目次から【まとめ】と書いてある項目に飛んでください。
はじめに
学振DCでもらえる月20万円のお金から、税金や保険料など、誰もが負担しなければならないお金について計算しました。
丸め誤差の影響で、数円分の誤差はありますが、まさに誤差なので気にしないでください。
計算結果は、私が住む市町村において、2022年度(令和4年度)にかかる税金などを計算しています。
世帯構成は、1人世帯(扶養家族なし)を想定しています。
また、今回の計算は、前年度にも同様の収入があった前提での計算となります。
例えば、学振DCの1年目の場合、1月〜12月の”学振以外の所得”が4万円未満であれば勤労学生控除を受けられるため、税額を減らすことができます。
この記事では詳しくは触れませんが、勤労学生控除を受けたい場合、他のアルバイトなどで得る所得は4万円未満に抑えましょう。
なお、住民税や国民健康保険料は、住んでいる市町村によってわずかに金額が異なるので、詳しい金額は各市町村のホームページなどをご確認ください。
また、あくまで私個人が調べた情報を元にして計算したので、間違いがあるかもしれません。
もし誤りにお気づきになられた方は、Twitterや問い合わせフォームよりご指摘いただけますと幸いです。
以下、研究遂行経費を使い切る場合と、一切使わない場合の2パターンについて税金等の計算結果を説明します。
少しややこしいので、結果だけ知りたい場合は、目次から【まとめ】と書いてある項目に飛んでください。
研究遂行経費とは?
研究に関連する支出だけど研究費からは出さなかったお金については、研究遂行経費として計上できます。
経費計上できる金額は給付額の30%分、つまり6万円/月です。
経費計上することで、その分は非課税とすることができるため、節税につながります。
経費計上できる例として、
- 自宅での研究作業に使う機材の購入費
- 学会会場までの交通費
- 研究に関連する書籍代
などが挙げられます。
先ほども言いましたが、あくまで研究費から出さなかった分に限られます。
この研究遂行経費をJSPSに申請し、すべて経費として使い切った場合と、申請しなかった場合の2パターンについて、税金や保険料を計算しましたので、ぜひ参考にしてください。
経費を半分しか使えなかったら、2パターンの大体中間値くらいになると考えていいと思います(多分)。
研究遂行経費を使い切る場合
収入と所得(経費あり)
項目 | 年額 |
---|---|
①収入 | 2,400,000円 |
②研究遂行経費 | 720,000円 |
②給与所得控除 | 572,000円 |
所得(① – ② – ③) | 1,108,000円 |
学振DCの収入と所得について、各項目の詳しい説明をしていきます。
学振DCの給付額は20万円/月なので、年収は、
20万円 × 12ヶ月 = 240万円
ただし、研究遂行経費の使用を申請した場合、30%分(720,000円)は経費計上することで、非課税となります。
この場合、確定申告などで記載する年収は、
20万円 × 70% × 12ヶ月 = 168万円
となります。
学振からもらうお金は給与扱いなので、給与所得控除が適用されます。
国税庁の公式サイトによると、年収168万円の場合の給与所得控除額は「収入金額 × 0.40 – 10万円」なので、
168万円 × 0.40 – 10万円 = 572,000円
となります。
よって、控除適用後の所得は、
1,680,000 – 572,000 = 1,108,000円
となります。
国民年金(経費あり)
項目 | 年額 |
---|---|
国民年金 | 199,080円 |
令和4年度の国民年金保険料は16,590円/月ですので、年額は、
16,590円 × 12ヶ月 = 199,080円/年
となります。
国民健康保険(経費あり)
項目 | 年額 |
---|---|
所得 | 1,108,000円 |
基礎控除 | 430,000円 |
①医療分保険料 | 115,401円 |
②後期高齢者支援金等分保険料 | 36,435円 |
③介護分保険料 | 0円(40歳未満の場合) |
合計(① + ② + ③) | 151,836円 |
学振からお金をもらうようになると、親等の扶養から外れ、各自で国民健康保険に加入する必要があります。
加入方法や保険料は、市町村によって異なりますので、各自でお住まいの市町村のサイトなどで確認してください。
ここでは、私が住む市町村の場合の話をします。
国民健康保険は、(1)医療分保険料、(2)後期高齢者支援金等分保険料、(3)介護分保険料の3つから構成されます。
また、各区分には、所得によって変動する(ア)所得割額、加入者数によって変動する(イ)均等割額、1世帯あたりにかかる(ウ)平等割額の3区分が存在し、すべの合計が保険料となります。
それぞれの項目の金額は次の表の通りとなります。
なお、所得割額は、所得から基礎控除額(43万円)を差し引いた678,000円から求めます。
(所得税の場合の基礎控除とは金額が異なるので注意)
(1)医療分保険料 | (2)後期高齢者支援金等分保険料 | (3)介護分保険料 | |
---|---|---|---|
(ア)所得割額 | 678,000円 × 8.63% = 58,511円 | 678,000円 × 2.75% = 18,645円 | 0円 |
(イ)均等割額 | 28,090円 | 8,780円 | 0円 |
(ウ)平等割額 | 28,800円 | 9,010円 | 0円 |
合計 | 115,401円 | 36,435円 | 0円 |
すべて合計すると、保険料は年間151,836円となります。
ただし、ここに示したのは、40歳未満の1人世帯の場合です。
40歳以上の方の場合には(3)介護分保険料がかかります。
また、同一世帯内にも国民健康保険に加入する人がいる場合、(イ)均等割額を加入人数倍した値とします。
所得税(経費あり)
項目 | 年額 |
---|---|
所得 | 1,108,000円 |
基礎控除 | 480,000円 |
社会保険料控除 | 350,916円 |
①所得税 | 13,854円 |
②復興特別所得税 | 5,819円 |
所得税合計(① + ②) | 19,673円 |
所得税の計算には、基礎控除と社会保険料控除が適用されます。
所得税の場合、基礎控除は48万円です。
(国保の保険料や住民税の場合の基礎控除とは金額が異なるので注意)
社会保険料控除は今回の場合、国民年金199,080円 + 国民健康保険料151,836円 = 350,916円が所得控除されます。
(他にも所得控除が適用される方は各自で差し引いてください。)
ですので、課税される所得は、1,108,000円 – (480,000円 + 350,916円) = 277,084円となります。
国税庁によると、この所得に対する所得税率は5%(税額控除なし)なので、所得税は、
277,084円 × 5% = 13,854円
となります。
また、平成25年から令和19年までは復興特別所得税(2.1%)も納付する必要があり、金額は、
277,084円 × 2.1% = 5,819円
です。
以上より、所得税の合計は、13,854円 + 5.819円 = 19,673円となります。
学振からの奨励金は、所得税として毎月2,670円が源泉徴収されます。
年額にすると、32,040円/年ですので、実際にかかる所得税19,673円との差額12,367円は確定申告を行うことで還付されると思います。
住民税(経費あり)
項目 | 年額 |
---|---|
所得 | 1,108,000円 |
基礎控除 | 430,000円 |
社会保険料控除 | 350,916円 |
①調整控除 | 2,500円 |
②均等割 | 5,300円 |
③所得割 | 32,708円 |
住民税合計(② + ③ – ①) | 35,508円 |
住民税を計算する場合、基礎控除43万円が適用されます。
(所得税の場合の基礎控除とは金額が異なるので注意)
また、所得税と同様に、社会保険料控除が適用されるため、課税される所得は
1,108,000円 – (430,000円 + 350,916円) = 327,084円
となります。
①調整控除は、所得税と住民税を計算する際に適用される所得控除額が異なるので、それを少し補正しようという目的の控除だそうです。
計算方法は各市町村によって異なる気がしますが、私が住む市町村の場合、2,500円が税額控除されます。
②均等割は、課税対象の全市民に均等にかかる住民税です。
私の場合5,300円となります。
③所得割は、所得に応じて変動する住民税です。
私の住む市町村の場合、課税総所得金額の10%なので、
327,084円 * 10% = 32,708円
となります。
よって、住民税の合計は、5,300円 + 32,708円 – 2,500円 = 35,508円となります。
【まとめ】税金等を差し引いた手取り額(経費あり)
項目 | 年額 |
---|---|
収入 | +2,400,000円 |
研究遂行経費 | -720,000円 |
国民年金保険料 | -199,080円 |
国民健康保険料 | -151,836円 |
所得税 | -19,673円 |
住民税 | -35,508円 |
実質の手取り額 | 1,273,902円 |
学振DCでもらえるお金から各種税金などを差し引いた金額は、1,273,902円/年となります。
ひと月当たりにすると、106,159円/月となります。
実際には、経費として使える6万円/月も追加して、166,159円/月と考えるのが良いかもしれません。
ここから家賃や食費、光熱費などを捻出することになります。
金額を見ればみなさんも共感していただけると思いますが、研究遂行経費6万円を使い切る場合、生きていくのがやっとな金銭状況になります。
研究遂行経費を使わない場合
収入と所得(経費なし)
項目 | 年額 |
---|---|
①収入 | 2,400,000円 |
②研究遂行経費 | 0円 |
②給与所得控除 | 800,000円 |
所得(① – ② – ③) | 1,600,000円 |
学振DCの収入と所得について、各項目の詳しい説明をしていきます。
学振DCの給付額は20万円/月なので、年収は、
20万円 × 12ヶ月 = 240万円
研究遂行経費の使用は申請しないので、経費は0円です。
学振からもらうお金は給与扱いなので、給与所得控除が適用されます。
国税庁の公式サイトによると、年収160万円の場合の給与所得控除額は「収入金額 × 0.30 – 8万円」なので、
240万円 × 0.30 + 8万円 = 800,000円
となります。
よって、控除適用後の所得は、
2,400,000 – 800,000 = 1,600,000円
となります。
国民年金(経費なし)
項目 | 年額 |
---|---|
国民年金 | 199,080円 |
令和4年度の国民年金保険料は16,590円/月ですので、年額は、
16,590円 × 12ヶ月 = 199,080円/年
となります。
国民健康保険(経費なし)
項目 | 年額 |
---|---|
所得 | 1,600,000円 |
基礎控除 | 430,000円 |
①医療分保険料 | 157,861円 |
②後期高齢者支援金等分保険料 | 49,965円 |
③介護分保険料 | 0円(40歳未満の場合) |
合計(① + ② + ③) | 207,826円 |
学振からお金をもらうようになると、親等の扶養から外れ、各自で国民健康保険に加入する必要があります。
加入方法や保険料は、市町村によって異なりますので、各自でお住まいの市町村のサイトなどで確認してください。
ここでは、私が住む市町村の場合の話をします。
国民健康保険は、(1)医療分保険料、(2)後期高齢者支援金等分保険料、(3)介護分保険料の3つから構成されます。
また、各区分には、所得によって変動する(ア)所得割額、加入者数によって変動する(イ)均等割額、1世帯あたりにかかる(ウ)平等割額の3区分が存在し、すべの合計が保険料となります。
それぞれの項目の金額は次の表の通りとなります。
なお、所得割額は、所得から基礎控除額(43万円)を差し引いた1,170,000円から求めます。
(所得税の場合の基礎控除とは金額が異なるので注意)
(1)医療分保険料 | (2)後期高齢者支援金等分保険料 | (3)介護分保険料 | |
---|---|---|---|
(ア)所得割額 | 1,170,000円 × 8.63% = 100,971円 | 1,170,000円 × 2.75% = 32,175円 | 0円 |
(イ)均等割額 | 28,090円 | 8,780円 | 0円 |
(ウ)平等割額 | 28,800円 | 9,010円 | 0円 |
合計 | 157,861円 | 49,965円 | 0円 |
すべて合計すると、保険料は年間207,826円となります。
ただし、ここに示したのは、40歳未満の1人世帯の場合です。
40歳以上の方の場合には(3)介護分保険料がかかります。
また、同一世帯内にも国民健康保険に加入する人がいる場合、(イ)均等割額を加入人数倍した値とします。
所得税(経費なし)
項目 | 年額 |
---|---|
所得 | 1,600,000円 |
基礎控除 | 480,000円 |
社会保険料控除 | 406,906円 |
①所得税 | 35,655円 |
②復興特別所得税 | 14,975円 |
所得税合計(① + ②) | 50,630円 |
所得税の計算には、基礎控除と社会保険料控除が適用されます。
所得税の場合、基礎控除は48万円です。
(国保の保険料や住民税の場合の基礎控除とは金額が異なるので注意)
社会保険料控除は今回の場合、国民年金199,080円 + 国民健康保険料207,826円 = 406,906円が所得控除されます。
(他にも所得控除が適用される方は各自で差し引いてください。)
ですので、課税される所得は、1,600,000円 – (480,000円 + 406,906円) = 713,094円となります。
国税庁によると、この所得に対する所得税率は5%(税額控除なし)なので、所得税は、
713,094円 × 5% = 35,655円
となります。
また、平成25年から令和19年までは復興特別所得税(2.1%)も納付する必要があり、金額は、
713,094円 × 2.1% = 14,975円
です。
以上より、所得税の合計は、35,655円 + 14,975円 = 50,630円となります。
学振からの奨励金は、所得税として毎月4,760円が源泉徴収されます。
年額にすると、57,120円/年ですので、実際にかかる所得税50,630円との差額6,490円は確定申告を行うことで還付されると思います。
住民税(経費なし)
項目 | 年額 |
---|---|
所得 | 1,600,000円 |
基礎控除 | 430,000円 |
社会保険料控除 | 406,906円 |
①調整控除 | 2,500円 |
②均等割 | 5,300円 |
③所得割 | 76,309円 |
住民税合計(② + ③ – ①) | 79,109円 |
住民税を計算する場合、基礎控除43万円が適用されます。
(所得税の場合の基礎控除とは金額が異なるので注意)
また、所得税と同様に、社会保険料控除が適用されるため、課税される所得は
1,600,000円 – (430,000円 + 406,906円) = 763,094円
となります。
①調整控除は、所得税と住民税を計算する際に適用される所得控除額が異なるので、それを少し補正しようという目的の控除だそうです。
計算方法は各市町村によって異なる気がしますが、私が住む市町村の場合、2,500円が税額控除されます。
②均等割は、課税対象の全市民に均等にかかる住民税です。
私の場合5,300円となります。
③所得割は、所得に応じて変動する住民税です。
私の住む市町村の場合、課税総所得金額の10%なので、
763,094円 * 10% = 76,309円
となります。
よって、住民税の合計は、5,300円 + 76,309円 – 2,500円 = 79,109円となります。
【まとめ】税金等を差し引いた手取り額(経費なし)
項目 | 年額 |
---|---|
収入 | +2,400,000円 |
研究遂行経費 | 0円 |
国民年金保険料 | -199,080円 |
国民健康保険料 | -207,826円 |
所得税 | -50,630円 |
住民税 | -79,109円 |
実質の手取り額 | 1,863,355円 |
学振DCでもらえるお金から各種税金などを差し引いた金額は、1,863,355円/年となります。
ひと月当たりにすると、155,280円/月となります。
ここから家賃や食費、光熱費などを捻出することになります。
まとめ
項目 | 経費あり | 経費なし |
---|---|---|
収入 | +2,400,000円 | +2,400,000円 |
研究遂行経費 | -720,000円 | 0円 |
国民年金保険料 | -199,080円 | -199,080円 |
国民健康保険料 | -151,836円 | -207,826円 |
所得税 | -19,673円 | -50,630円 |
住民税 | -35,508円 | -79,109円 |
実質の手取り年額 | 1,273,902円/年 | 1,863,355円/年 |
実質の手取り月額 | 106,159円/月 | 155,280円/月 |
今回の記事では、学振DCの人が払うことになる税金や保険料等についてお話ししました。
研究遂行経費の使用を申請した場合、手元に残る金額は106,159円/月 + 経費分60,000円です。
ただし、経費分の6万円は研究関連の物品購入などに充てる必要があります。
使いきれなかった場合、使いきれなかった分にかかる税金を翌年に請求されるようです。
研究遂行経費の使用を申請しない場合、手元に残る金額は155,280円/月です。
使い道に制限はありませんが、経費を申請した場合(経費分込み)より1万円ほど少なくなります。
個人的には、「研究遂行経費を申請しておいて、使い切れなかった分は仕方ないけど税金を払う」というのがベストだと思います。
使い切れなかった分には10.21%の追徴課税があります。
復興特別所得税を含めた本来の所得税は7.1%なので、少し多めに課税されることになりますが、確定申告をすれば差額分は取り戻せると思います。
研究遂行経費の使用の有無によらず、税金などを差し引いた残りは大体16万円/月程度です。
ここから家賃や食費などの生活費を引くと、ほとんど残らないかもしれません。
もし学費を払うとなると、生きていくことすら難しくなるので、大学の制度上可能なら必ず学費免除申請すべきだと思います。
ありがたいことに、私の場合は前期授業料を全額免除していただけることが決定しました。
よほどのことがない限り、後期も免除になると思っています。
(2022年7月29日追記)
2021年度からは副業も可能になったので、研究に支障がでない範囲でアルバイトをすることも検討してみるべきかもしれません。
もしくは、学振と併給可能な奨学金を探すとか。
なかなか苦しいですが、なんとかやっていきましょう…!
ちなみにですが、住民税の納付は一般的に翌年の6月以降となります。
およその納付額を事前に知っておき、お金を残しておきましょう。
お金の話は煩雑で面倒ですが、学振DCでもらえる金額はギリギリ生活できる程度なので、細かく知っておかないと痛い目を見るかもしれません。
学振に採用された方やこれから採用される方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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