【学振DC】月収20万円の生活ってどんな感じ?【結論:余裕なんて全然ない…】

こんにちは、Rayです。
今回は、学振DCの生活の実態をお金の面から考えてみたいと思います。

学振DCに採用されるともらえる月20万円の奨励金があると、どんな生活が可能なのでしょうか?
この記事では、学振DCの生活を金銭面でシミュレーションします。

Ray

税金・保険料・生活費を差し引いたら何円残るんだろう?
という疑問にお答えします!

結論を言うと、月20万円では余裕のある生活なんてできません。
ですので、少しでも余裕を持たせるために何ができるかについても考えてみます。

他の方のブログ等でも同様の記事はたくさんありますが、中には少し情報が古い記事や、少しだけ誤りを含む記事もちらほら見かけます。
本記事では2022年度現在の最新情報を元にしてお話ししますので、最近学振DCに採用された方やこれから申請する方は、この記事を参考にして今後の生活のイメージを掴んでください!

私自身も何か間違えている点があるかもしれないので、お気づきの方はTwitter問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。

記事の内容

学振DCの実質の手取り額

学振DCが受け取る研究奨励金は給与扱いとなります。
ですので、基本的には各種税金などの課税対象となります
まずはこれらの費用を計算し、実質の手取り額を計算してみます。

ここで考える費用は次の4つです。

  • 国民年金保険料
  • 国民健康保険料
  • 所得税
  • 住民税

さて、詳しく計算しようと思うと大変だけど頑張るか!
と言いたいところですが、長くなりすぎるので、これらについては別記事にまとめました。

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ぜひ読んでいただきたいところですが、そんなの面倒だと言う方のために、ここでは計算結果を簡単にまとめた表を掲載します。

項目経費あり経費なし
収入+2,400,000円+2,400,000円
研究遂行経費-720,000円0円
国民年金保険料-199,080円-199,080円
国民健康保険料-151,836円-207,826円
所得税-19,673円-50,630円
住民税-35,508円-79,109円
実質の手取り年額1,273,902円/年1,863,355円/年
実質の手取り月額106,159円/月155,280円/月
学振DCの手取りの計算結果まとめ

「経費あり」と「経費なし」の2種類がありますが、ここで言う経費とは、研究遂行経費のことを指します。
自費で購入した研究関連の物品について、最大72万円/年(給付額の30%)まで経費として計上できる制度です。
経費計上した金額分は非課税になるので、簡単に言うと節税できます。

限度額まで経費を計上する場合、実質の手取りは106,159円/月 + 経費分60,000円/月
経費を一切計上しない場合、実質の手取りは155,280円/月

となります。
経費を半分しか使わなかった場合の手取り額は大体中間くらいの金額(13万円くらい?)になると思います。

ただし、これらの金額は前年にも同程度の収入があった場合の話です。
奨励金の給付が4月から始まる学振1年目は、値が大きく変わることに注意してください。

生活費

食費や家賃などの生きていく上で避けられない生活費を、私の経験をベースにして概算してみます。
ちなみに、一人暮らしを想定しています。

項目月額
家賃50,000円
食費20,000円
光熱費10,000円
通信費7,000円
合計87,000円
大学院生の最低限の生活費

家賃は地域によって大きく違うと思います(東京の家賃怖い)。

食費は、

Ray

自炊もある程度する!
でもそんな暇なくてコンビニや宅配に頼ることもある…
これくらい許してください…!

という私自身の食費です。

光熱費は、電気・ガス・水道の合計額ですが、だいたい3,000円ずつくらいじゃないですか?
季節にもよりますし、あくまで概算ということで。

通信費は、自宅のインターネット回線とスマートフォンの通信費の合計です。
光回線4,500円+格安SIM2,500円を想定しました。

大学院生は、自分用のPCや勉強用の書籍を購入したりもするかもしれませんが、これは経費(72万円/年)の範囲で購入できると思うので省略します。
概算したとしても、かなり個人差があってあてにならないと思いますし。

というわけで、一人暮らしの大学院生が生きるためにかかる最低限の生活費は87,000円/月くらいとなります。
学振DCの実質の手取り額106,159円から生活費を引くと、残りは19,159円となります。

授業料… あれ?赤字確定?

さてみなさん、お気づきでしょうか?
上で概算した生活費には、大学院に通うために必要な交通費と学費が含まれていません。
そして、学振DCの場合はなんと、これらの費用は経費計上することが認められていないんです。

Ray

大学院生が大学に行く目的って研究以外に何もないじゃないですか。
大学への交通費=経費じゃないですか…

なんて言ってても仕方がないので、かかる費用を計算しましょう。

Ray

交通費は自転車で頑張れば0円だ!

というスパルタを強いることにして、学費だけ考えてみます。
国公立大学の学費は年間535,800円なので、一月あたりに換算すると44,650円/月です。

学振DCの手取りから生活費を引くと残りは19,159円でしたね。
ここから学費を引くと…-25,491円/月?

そう、赤字です。
うちはもう少し家賃が安い!食費はもっと抑えられる!という方もいるかもしれませんが、それでもほぼ赤字確定です。
しかもこれ、国公立大学の学費ですからね?
私大の場合どうなるのか、考えるだけで恐ろしい…

このままでは生きていけないので、とりあえず学費免除は必ず申請しましょう
申請が通るか否かは保証できませんが、通らないと生きていけないんだという切実な思いをぶつけてみてください。

ありがたいことに、私の場合は前期授業料を全額免除していただけることが決定しました。
よほどのことがない限り、後期も免除になると思っています。
(2022年7月29日追記)

仮に学費が全額免除されたとしても、生活費を差し引いた残りは2万円/月くらいです。
これで「健康で文化的な最低限度の生活」は送れるのでしょうか…?
ギリギリ生活はできたとしても、少なくとも将来のために貯金するなんてほぼ無理です。

Ray

死にはせずとも、同世代の社会人の生活ぶりを見聞きして悲しくなることはあるでしょう…

学振DCの給与だけでは生きていけない場合の対処法

研究遂行経費の使い方を考える

研究遂行経費の制度は、節税のために必ず利用すべきだと考えます。
経費を最大限使い切った場合、税金等が1万円/月程度抑えられます

しかし、節税のために経費計上できそうなものを無理やり買うのは自分の首を締めるだけです。

泣く泣く自費で出さざるを得なかった研究関連の出費を経費計上する

くらいの意識を持っておいてもいいかもしれません。
同時に、経費計上できそうなものはとりあえず何でも申請してみるのがいいかもしれません。
経費として認められない場合はJSPSから却下されるだけみたいですし。
(あからさまに怪しい費用は申請したらダメですよ?)

それから、研究に関連する出費は科研費(研究費)から出せる場合も多いと思います。
科研費から出せるなら科研費から出すべきです。
(学振DCは、最大150万円/年の科研費を交付申請できます。)

また、そもそも、研究遂行経費(72万円/年)を使い切るのは難しいと思います。
無理に使い切ろうとせず、余ったらラッキーくらいの気持ちで生きていくといいかもしれません。
使いきれなかった分には税金がかかりますが、無駄遣いするよりマシです。

あえて経費の利用は半分くらいに抑えて、残りの3万円/月を生活費に回すような手段もありかもしれません。
無駄遣いするくらいなら、ね。
使い道があるのであれば節税のためにも全額経費として使いましょう。

アルバイトをする

学振は、2021年度から副業の制限が緩和されました。

それまでは、原則副業禁止だったので、アルバイトなどは基本的に一切できませんでした。
しかし、制限の緩和により、アルバイトなどの副業でひと月に数万円稼ぐ程度であれば問題なくなりました

私自身、家庭教師や学内の被験者バイトなどを週に数時間だけしています。
ひと月に4万円くらいは稼げているので、少しはゆとりのある生活になっていると思います。

私はしていませんが、TAやRAなどのアルバイトも有力候補になると思います。

副業によって年間20万円を超える所得が生じると確定申告をする必要がありますが、今やスマホで簡単に申告できる時代なので難しいことはありません。

民間の奨学団体などから奨学金をもらう

選択肢は少ないながら、学振と併給可能な奨学金もこの世には存在します。
中には学振とほぼ同額をもらえるものもあったりするらしいので、条件が合う場合は応募してみるのが良いと思います。

仮にそのような奨学金をもらえることになれば、月収40万円近くになるかもしれません。
夢がありますね…!

学費免除を申請する

大学の制度上認められるのであれば、授業料免除は必ず申請しましょう
学振に採用されていれば独立生計となるので、多くの場合申請は通ると思います。

国公立大学の場合、授業料は年間535,800円なので、一月あたりに換算すると44,650円/月です。
授業料を全額免除された場合は、毎月4万円以上のお金が浮くことになります。

上述したように、授業料を払うと正直生きていくことすら困難になります。
ですので、採用条件が厳しくて免除されなさそうだなと思っても、ダメ元で申請することをおすすめします。

ありがたいことに、私の場合は前期授業料を全額免除していただけることが決定しました。
よほどのことがない限り、後期も免除になると思っています。
(2022年7月29日追記)

学振1年目にお金を貯める①

学振DCの1年目は、奨励金を給付されるのが4月から12月の9ヶ月のみとなります。
したがって、研究遂行経費の使用を申請した場合の年収は、

(20万円 – 経費6万円) × 9ヶ月 = 126万円

となります。
ここから給与所得控除55万円を差し引くことで、給与所得は71万円となります。

所得が75万円以下の大学院生の場合、勤労学生控除(27万円)の適用対象となります。
また、学振DCの1年目の学生は国民健康保険料を7万円強支払いますが、これは社会保険料控除の対象となります。
(国民年金保険料は猶予申請した前提で考えます)

所得税の計算においては、勤労学生控除27万円+社会保険料控除7万円+基礎控除48万円=合計82万円ほどが控除されます。
住民税の計算においては、勤労学生控除27万円+社会保険料控除7万円+基礎控除43万円=合計77万円ほどが控除されます。
給与所得が71万円なので、所得税の計算においても住民税の計算においても、課税対象の所得は0円となります。

つまり、所得税や住民税が0円になるということです。
(厳密には、住民税には均等割という区分等があり、これに相当する約3,000円ほどは支払うことになります。)

所得税は所得の5%、住民税は所得の10%なので、勤労学生控除27万円によって、

27万円 × (5% + 10%) = 約4万円

だけ納める税金が抑えられることになります。
4万円もあればできることは色々ありますね。

ただし、勤労学生控除を受けるためには、学振以外の所得が10万円以下であることなど、いくつかの条件があるので注意してください。
1年目の1〜3月にバイトをしてしまうと、勤労学生控除を受けられなくなる可能性が高いです。

Ray

私はアルバイトを継続しており、学振以外の所得が余裕で10万円を超えるので、勤労学生控除は受けられません。
申請するだけで4万円節税と、アルバイトで得られる収入を天秤にかけて、どちらがおいしいか考えてみるといいと思います。

ここで示した税率は、学振DCで得られる所得の人に適用される税率です。
副業による所得が多い場合には税率が変化しますのでご注意ください。
また実際には、所得税として復興特別所得税2.1%も追加されます(2022年度現在)。
(参考:国税庁ホームページ

学振1年目にお金を貯める②

国民年金保険料と国民健康保険料は、前年の所得に応じて支払う金額が決まります。
学振DCに採用される学生の多くは、それまで収入が少なく、親の扶養下にあると思います。
この場合、学振DCの1年目には上記の保険料が抑えられます。

前年に親の扶養下にいられる程度の収入しか得ていなかった場合、国民健康保険料の所得割額が0円となります。
これにより、約3万円/年の出費が浮きます(均等割額+平等割額=合計75,000円程は支払います)。

また、国民年金保険料は「学生納付特例制度」を利用することで、納付が猶予されます。
国民年金保険料は20万円/年くらいなので、国民健康保険料と合わせて23万円/年ほど浮きます
(なお、これらの金額は研究遂行経費をすべて使い切った場合をベースとして導出しています。)

このように、1年目だけは年間23万円くらい出費を抑えられるはずなので、貯金するなり資産運用に回すなりするといいと思います。

国民年金の納付を猶予された場合、納付しなかった分は将来受け取る年金が少し減ります。
大学院生のうちから払っておきたいと言うことであれば、支払っても良いと思います。
猶予された場合、後々追納することで将来受け取る年金を取り戻す(?)こともできます。

住民税と所得税

【副業をしない場合】

1年目のみ、副業をせず勤労学生控除を適用できた場合には、所得税も住民税もほとんどかかりません。
住民税の均等割という区分の3,000円くらいは支払うことになります。
詳しくは、前項「学振1年目にお金を貯める①」を参照。

【副業をする場合】

副業での所得があり勤労学生控除を受けられない人は、自分が支払う税額と支払う時期を事前に把握しておきましょう。

住民税を支払うのは翌年の6月頃からです。
学振と副業の合計所得額の10%程度のお金を1年目の時点で残しておきましょう。
3万円+副業の収入の10%を貯金しておけば多分OKです。

所得税は、JSPSからお金を振り込まれるときに天引き(源泉徴収)されます。
年末調整か確定申告で一部が返ってくるはずなので、支払いについて深く考えることはありません。
ただし副業をしている人は、年度末の確定申告と同時に不足分の所得税を納税しましょう。
副業の収入の5%を貯金しておけば多分OKです。

厳密には、副業の収入の額によって税率が変わるので上記は正確ではありません。
自分で各種控除を考慮して所得と税額を厳密に計算できる人は、ぜひ計算してみてください。

資産運用

学振に申請するときは、月に20万円ももらえるなんて最強!とか思うわけですが、実際に収支をシミュレーションしてみると金銭的にはかなりギリギリだと気付かされます。
それを何とかするために、ここまでに述べたような工夫するわけです。

軽くまとめると、

  • 生活費を差し引くと手元に残るのは2万円/月
  • 研究遂行経費は上限の半分くらいは使って、残り3万円/月は自由に使う
  • アルバイトで3万円/月稼ぐ

また学振1年目の場合、

  • あまりバイトをしないなら勤労学生控除適用で税金を約4万円抑える
  • 前年に親の扶養下にあったくらい収入が低ければ保険料が23万円/年ほど浮く

こうやって浮かせたお金から趣味や娯楽に使う費用を捻出しましょう。

でも、博士課程の学生は年齢的にはもう立派な大人です。
娯楽にばかり使いすぎず、将来のことも考えてお金を貯めておきたい気持ちもあります。

Ray

博士課程に進む時点で、将来のことを正常には考えられていない気もしますがそこは過ぎた話なので気にしません!

ここでさらに一歩踏み出して、ただ節約して貯金するだけでなく一部を投資に回して”増やす”ことを考えてもいいと思います。
いわゆる資産運用です。

日本の預金金利の低さと、この記事を執筆時点での円安(1ドル130円)を鑑みると、貯金していても円の価値は目減りする一方ではないかと思わずにはいられません。
(2022年7月14日には139円/ドルを突破しました)

投資なんて難しいし、ギャンブル的な側面があって怖いと思っている人も多いと思いますが、実はそんなにハードルの高いものではなさそうです。
100円くらいから始められる投資があったり、投資信託というプロの投資家にお任せする投資方法があったり、NISAという制度を利用すると投資で得た利益が非課税になったり…
未経験でも投資を始めやすい環境がかなり充実しています。

私自身も1ヶ月ほど前に人生で初めて株式を購入しましたが、毎日の値動きに一喜一憂して楽しめています。
世界のニュースとか経済のことに関心を持つようになったのも良かった点です。

Ray

研究ばっかりやってて世間知らずになるのできるだけ避けたいですし。笑

また、2022年度からは、高校の家庭科の授業で投資について学ぶようになったようです。
各高校生がどれだけ関心を持ってかはわかりませんが、投資はより一般的なものになるかもしれません。

リスクを抑えて堅実な投資をしても年に3%くらいの利益は珍しくないらしいので、ただ貯金するよりはお得かなと思っています。
私自身はまだ投資を始めたばかりなので、初心者が実際にどれだけの利益を出せるのかはこれから検証します。

投資に回すお金は、最悪無くなっても困らない金額にとどめるのがいいとは思いますが、社会勉強も兼ねて始める価値はあると思います。
ジュースを一本我慢するお金を投資に回すくらいの気持ちでも始められるので、興味がある方は投資について調べてみてはいかがでしょうか?

まとめ

今回の記事では、学振DCの生活について金銭事情を考えてみました。

月に20万円もらえるとは言え、これだけで余裕のある生活送れるとは決して言えません
この記事で紹介したお金に困らないための提案を簡単にまとめます。

  • 学費は免除申請する
  • 研究遂行経費を使い切ることが正義とは限らない
  • 学振と併給可能な奨学金を調べてみる
  • 2021年度から副業をしてもよくなった
  • 学振1年目は節税のチャンス
  • 資産運用を始めてみる良い機会かも

こういった方法で金銭面を安定させ、健康に博士課程を終えたいところです。

今後、学振DCの採用者として生きていく私自身の生活に何か変化があったら惜しみなく報告していこうと思います。
少し暇ができたし覗きに行ってやるか!というくらいの気持ちでまた見に来てもらえると嬉しいです。

ご意見・ご感想などございましたら、Twitter問い合わせフォームよりご連絡ください。
自分はこんなことしてる!こんなことしてた!という経験談もお待ちしています。

学振DCの採用者が支払う税金などについてまとめた記事もあるので、そちらも合わせてご覧ください。

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この記事を書いた人

脳神経科学を専攻する大学院生です。
研究に取り組む中で直面した問題や、役に立ちそうな情報を共有しています。
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