こんにちは、Rayです。
この記事では、学術振興会の特別研究員(以下、学振とします)に採用されるために意識すべき申請書の書き方を紹介します。
私自身が学振DC1に採用された経験をもとに執筆しました。
これから学振の採用を目指す学生さんは、ぜひ参考にしてください。
学振の申請から採用までのスケジュールについてはこちらをご覧ください。
学振の申請書の形式
様式の変更について
2022年度採用分から、申請書の様式が変更されました。
例えば、2021年度採用分までは「2. 【現在までの研究状況】」という項目がありましたが、2022年度からはなくなりました。
先輩の申請書や、ネット上で公開されている申請書を参考にする場合、様式の変更に気をつけてください。
2022年度採用分と2023年度採用分はまったく同じ様式でした。
今年申請する方は、去年の先輩方の申請書を参考にするのが良いと思います。
2023年度採用分の申請書の構成
2023年度採用分の申請書は、次の項目で構成されています。
(2022年度採用分とまったく同じ形式です)
- 申請者情報等(電子システム上で入力)
- 【研究計画】
- 研究の位置付け
- 研究目的・内容等
- 人権の保護及び法令等の遵守への対応
- 【研究遂行力の自己分析】
- 研究に関する自身の強み
- 今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素
- 【目指す研究者像等】
- 目指す研究者像
- 上記の「目指す研究者像」に向けて、特別研究員の採用期間中に行う研究活動の位置づけ
本記事では、申請書全体を通して意識すべきポイントを紹介します。
申請書を書くときに意識すべきポイント
はい、ここから本題です!
学振の申請書を書く上で意識すべき3つのポイントはこれです!
- 1ページ目で審査員を惹きつけよう
- とにかくわかりやすさ重視
- 全体を通して一貫したストーリーを作る
- 自分自身をアピールすることが大事
では、各ポイントについて詳しく説明します。
①1ページ目で審査員を惹きつけよう
審査員は短期間に何十件もの申請書を読まなければなりません。
学振の申請書を審査するのは、学生の比ではないほど忙しい研究者ですので、申請書の審査に割ける時間には限度があります。
1つの申請書を読むのに何十分も時間をかけることは、まぁないでしょう。
研究や事務作業の隙間時間にチラッと見る程度かもしれません。
正直、斜め読みすることもあるかもしれません。
適当に見ていると言うわけではないですよ!
それくらい忙しいだろうという私個人の想像です。
この状態で採用してもらえる申請書は、1ページ目で「おもしろそうだ!」と思わせる申請書です。
これは間違いありません。
ただでさえ忙しくて時間がないのに、つまらなさそうな申請書は読む気がなくなると思いませんか?
1ページ目でいかに審査員を惹きつけるかが最も重要なポイントだと言っても良いでしょう。
まずは申請書を読もうと思ってもらいましょう!
研究を着想した経緯から、仮説や予測される結果、この研究の何がおもしろい点なのかなど、1ページ目の【研究計画】で研究の全体像が分野外の人にもわかるように書きましょう。
申請書を読む審査員が、申請者の専攻する分野の専門家である保証はないので、専門用語を多用するのは避けるのが無難です。
JSPSが過去の審査員を公開しているので、自分が申請する審査区分に近い分野の先生がいるか事前に確認してみるのも良いかもしれません。
キーワードや、研究の主題部分はゴシック体&太字にするなど、視覚的な印象付けもかなり大事です!
掲載する図についても、解像度を上げる、フォントサイズを大きめにするなど、見やすくてインパクトのあるものになるように工夫が必要です。
②とにかくわかりやすさ重視
研究を行なっていく過程や、論文を執筆する中で、
- 得られた実験結果でどこまで言えるだろう?
- 結果の妥当性は?
- 見落としていることはないか?
- 専門用語を正確に使えているか?
などなど、懐疑的な見方で吟味し、正しいことを適切な表現で述べようとする姿勢が身に付いていると思います。
少なくとも、そういった指導を受けてきた方が多いと思います。
この姿勢で学振の申請書を書くと、淡々とした文章になり、正直つまらない文章になりがちです。
私自身がそうでした。
研究室の先生に初稿の添削をお願いした際に、(端的に言うと)「つまらない」と評価されました。
そうならないために意識すべきポイントは、
- わかりやすさ重視
- テンポ重視
ということです。
審査員が申請書を一回読んだだけで、「なるほど、おもしろそうだな」と思わせることが大事になります。
何回も読んでもらえるとは思わない方が良いです。
要するに、読みやすい文章を書いてください。
難しい表現や回りくどい表現を避けましょう。
極端に長い文章は、複数の文章に分割しましょう。
当然ですが、「てにをは」の間違いに気をつけましょう。
読みやすいかどうかを自分で確認するときには、声に出して読むことをおすすめします。
声に出して詰まる部分は、黙読でも読みづらい可能性が高いです。
申請書を書いていると同じ文章を何百回も目にするので、読みやすいかどうか自分ではわからなくなってきます。
そういうときは、数日間空けてから読み直すこともおすすめです。
たまにはリセットしましょう!
③全体を通して一貫したストーリーを作る
これは「②とにかくわかりやすさ重視」にも関連するポイントです。
1ページ目と2ページ目で言っていることがずれていたりすると、当然混乱します。
段落が変わった途端に大きく話題が変わったりしても、申請書の内容全体を理解するのが少し面倒になります。
前項でも述べましたが、一回読んだだけで、「なるほど、おもしろそうだな」と思わせることが大事です。
申請書全体を通して一貫したストーリーにし、すんなりと頭に入ってくる構成にしましょう。
また、大学(学部)で行っていた研究と、大学院で行う研究が異なる学生も多いと思います。
この場合、申請書の【研究計画】と【研究遂行力の自己分析】の繋がりが薄く、一貫性のない申請書になる可能性があります。
こうなると、審査員に、
これまでの研究と、これからやる研究が全然関係ないけど、本当に実現できるの?
という印象を与えかねません。
もちろん、仕方ないこともあるかもしれませんが、できるだけ関連性を強調してください。
私は今までこんな研究をしてきた!
その中でこんな着想を得て、この研究を計画するに至った!
これまでの研究で身につけた〇〇の能力は、今後の研究に役立つ!
こじつけでも構わないと思います!
これまでの人生で得た知見の全てを博士課程の研究に注ぐんだ!という強い意志を見せつけてください。
やってきたことの全てをこじつけるくらいの意識で。
④自分自身をアピールすることが大事
指導教員の先生から、
「学振の申請書は基本的に、自分研究語り」
「学振の申請書は就職活動で書くESみたいなもの」
と言われました。
つまり、自己アピールが大事だということです。
- 私にはこれまでにこういった経験がある
- 私には研究計画を遂行する能力がある
- 私には研究者になる素質がある
などなど、とにかく自分を押し出していきましょう。
学振の申請書では、研究計画の良し悪しだけでなく、研究者としての素質も見られます。
審査員に、
この学生は優秀な研究者になりそうだ
と思わせましょう。
かと言って、努力家であるとか探究心があるとか書くだけでは意味がありません。
わざわざ博士課程に残るような人は全員努力家であり、人並み以上の探究心を持っています。
口先だけのアピールでなく、客観的に納得してもらえるような経験や業績を元にした自己アピールをしてください。
あくまで一例ですが、
- 探究心がある。
- 大学入学直後から□□研究に関心を抱き、学部2年次からは〇〇研究室で研究活動に自主的に参加した。
と言った感じです。
⑤審査区分の選択
申請書作成の始めの方に、審査区分を選択する項目があります。
基本的に、自分の研究の内容に最も近い区分や、よく見かける分野名を基準に選ぶと思います。
審査区分表は下記サイトで公開されています。
採用される可能性を上げるためには、この審査区分の選択がとても重要になります。
なぜなら、区分によって審査員が異なるからです。
過去に審査員を担当した方の一覧は、下記サイトで公開されています。
以下、私の専攻である神経科学系を例に具体的な話をします。
私の研究では、fMRI計測やニューロン活動計測によって、脳機能を解明することを目的としています。
このような「神経科学」に最も近い審査区分は、
- 生物系科学
- 神経科学およびその関連分野
- 神経科学一般関連
- 神経科学およびその関連分野
になると思います。
しかし私は、指導教員のアドバイスを元に、
- 社会科学
- 心理学およびその関連分野
- 実験心理学関連
- 心理学およびその関連分野
に申請しました。
これは私が持つイメージですが、
神経科学一般:厳密性や頑健性が重視される硬い分野
実験心理学 :ふわっとしたテーマも扱う分野
といった印象です(少し雑な表現ですが)。
私の研究テーマはかなり高次な認知機能を対象にしており、厳密性や頑健性をどこまで突き詰められるかわかりません。
近い内容の先行研究もほとんどないので、結果をなかなか予想しづらかった点でも、ふわっとした印象の研究計画でした。
神経活動を計測・解析して脳機能を解明するという点では神経科学ですが、神経科学を専門とする審査員の合格水準を満たす硬い研究ではないと判断し、実験心理学の区分で応募しました。
みなさんの研究分野の中でも、硬い分野と、比較的ゆるい分野みたいな棲み分けがあるのではないでしょうか?
申請する区分を名前だけで決めようとしている方は、一旦考え直しても良いかもしれません。
ご自身の研究テーマに合わせて適切な区分を選ぶ必要があります。
硬い話をゆるい区分に出してもつまらないと判断されるかもしれませんし,ゆるい話を硬い区分に出しても研究計画が甘いと評価されてしまいそうです。
とは言え、審査区分は多すぎて選ぶのは大変だと思います。
選ぶ基準もわかりませんよね。
ですので、私からは次の2つの対応をおすすめします。
- 指導教員や学振に採用された先輩に助言をもらう
- 各区分の過去の審査員を見て、近い分野の先生がいる区分を探す
結局、先生や先輩からの経験を元にした指導が一番有効です。
採用実績がある分野であれば、その分野で採用されるための適切な指導を受けられるかもしれません。
また、過去の審査員はこちらに公開されていますので、知っている先生や、近い分野で研究されている先生の名前を探してみてください。
近い分野の先生であれば、申請書の内容をすんなりと理解してもらえるはずなので、少し有利になると思います。
まとめ
今回は、学振に採用されるために意識すべき申請書作成のポイントを紹介しました。
すごく端的にまとめると、
- とにかく読みやすさを重視!
- 自己アピールが大事!
となります。
具体的な例文などはあえてほとんど載せませんでした。
と言うのも、研究分野や研究室によって何をどれくらいのテンション感で書くかはかなり異なると思うからです。
具体的な部分は、研究室の先生方に協力してもらってください。
先生方は申請書執筆のプロです。
審査する側の気持ちもわかった上で指導してもらえるはずです!
申請書の例は下記のサイトなどで公開されているので、参考にしてみても良いかもしれません。
どれも一読でおもしろい!と思えるものばかりです。
具体的な部分で質問したいことやご不明点などがございましたら、問い合わせページかTwitterよりお願いします!
個別にご連絡いただければ、もう少しぶっちゃけた話もできると思います笑
学振の申請書を作成する皆さんのお役に立てれば幸いです!
また、学振の申請から採用までのスケジュールについてこちらで紹介しているので合わせてご覧ください。
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